発言席
ないないずくしの議論から脱却を
村上 忠雄
1
1神奈川県小田原保健所・衛生教育
pp.335
発行日 1980年5月10日
Published Date 1980/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662206243
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地域の保健活動は,結核に代表される伝染病予防から,社会的環境の変化を受けて,成人病に代表される慢性疾患,老人保健などに移行した。その対応も,画一的から多面的に,疾病中心から地域中心へ,保健と医療福祉が一体となった活動に変わり,さらにこれらに健康づくり運動が加わったことにより,疾病や異常の早期発見を主とした従来の二次的予防から,一次的予防である健康増進へと大きく変化をしてきている。
このようななかで保健婦は,地域保健の担い手として第一線に立ち,常に住民の健康を願いながら活動してきた実績は高く評価されるものである。しかし,近年の急激な社会変動に伴い,多様化した保健ニーズにこたえる新しい事業施策に対し,保健婦活動も新たな展開が求められているが,現実はどうであろうか。従来の保健婦業務から脱却し得ず,個に没頭し,技術によりどころを求め,組織に埋没しているのではなかろうか。"人がいない","時間がない","予算がない","機動力がない"などと,活動に向けての議論よりも,ないないずくしの議論にエネルギーをそそぎすぎて,活動にまわすエネルギーが少なくなったことに問題があるのではないかと思う。
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