視点
地区診断の重要性
関 龍太郎
1
1松江総合医療専門学校
pp.728-729
発行日 2010年9月15日
Published Date 2010/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401101900
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公衆衛生の原点
まず,公衆衛生の原点を見てみよう.公衆衛生の定義はウィンスロー(1949)により「公衆衛生は,共同社会の組織的な努力を通じて,疾病を予防し,寿命を延長し,身体的・精神的健康と能率の増進をはかる科学・技術である」とされている.「健康」の定義は「身体的・精神的・社会的に完全に良好な状態であり,単に病気あるいは虚弱でないことではない」(世界保健機関憲章,1948)となっている.2つの定義から,重要なことは,「公衆衛生は,身体的,精神的に良好だけでなく,社会的にも良好でなくてはならないし,それを公衆衛生として推進していくためには,共同社会の組織的な努力が必要であること」である.また,日本国憲法第25条においては「①すべて国民は,健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する.②国は,すべての生活部面について,社会福祉,社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない」と明記されている.このように憲法に,国家責任の原則,平等の原則,最低生活保障の原則という3原則が記されている.これらに基づいて,戦後,日本は公衆衛生分野で各種の法律を充実させてきた.しかし1980年頃から,それまで充実してきた公衆衛生が,新自由主義の施策によって見直されてきた.すなわち各種事業が,「市場原理導入,公的責任の縮小,自己負担の増加,規制緩和,民営化」の影響を受けてきていた.政権交代後,その新自由主義に対しても,反省が起きている.
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