発言席
"医"とは何か"療"とは何か
志鳥 栄八郎
1
1東京スモンの会
pp.641
発行日 1977年11月10日
Published Date 1977/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662205911
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いまから9年前,昭和43年の夏のことである。わたしは,ちょっとした下痢から整腸剤を飲みはじめた。もちろん,れっきとした病院の,れっきとした医師の処方による薬なので,わたしは信用して服用した。ところが,それからまもなく,背部と腹部に激痛が起こり,両足がしびれ,歩行が困難となった。医師は,「いま流行しているスモンです」と診断した。そして,「原因はよくわかりませんが,ウィルスらしい」といった。そして,スモンに最もよく効くとされている薬は,いま服用している薬だ。というので,わたしは,1回も欠かさずに飲み続けた。
ところが,病気は悪化するいっぽうで,再燃するたびごとに,視力が落ち,もの書きのわたしが,資料も読めなくなれば,原稿も書けなくなってしまった。それから2年後,厚生省のスモン調査研究協議会は,「スモンの原因はキノホルム剤によるもの」と断定した。つまり,わたしがスモンを治すためにせっせと飲み続けていた薬が,実は犯人だったわけである。服用した日数は748日間,その量は,なんと1,496gに達していた。これは,ヘビー級の量である。科学が高度に発達した現在,こんなバカな話があるのだろうか。いや,実際にあったのである。被害者の数は,全国で,推定約2万,その一部の人たちが,いま裁判で戦っている。
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