扉
何をやるか,何をやらないか
新妻 邦泰
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1東北大学大学院医工学研究科神経外科先端治療開発学分野
pp.101-102
発行日 2020年2月10日
Published Date 2020/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1436204145
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- 文献概要
私の所属する東北大学大学院医工学研究科「神経外科先端治療開発学分野」は,もともとは日本初の脳血管内治療専門の講座として前任の高橋明先生が拓かれ,私が教授として引き継ぐにあたり,臨床としての脳血管内治療科は脳神経外科に統合し,純粋に研究を行う講座として前述のように名前を変えてスタートした.講座は研究を主目的としているが,私は血管内治療や神経内視鏡手術に携わり,臨床を行いながら研究にも従事する日々を過ごしている.よく,「臨床と研究のバランスはどのようにしているのか?」と質問されるが,基本的には脳神経外科医として通常の臨床業務を行いながら,並行して研究を進めている.この点については,さまざまな葛藤もあるが,臨床から離れず,ベッドサイドで必要になるニーズと乖離することなく研究を進め,その成果を実際に臨床にまで橋渡しする研究者も必要だと信じ,取り組んでいる.
私は昔から座右の銘というほどではないが,「為せば成る 為さねば成らぬ 何事も 成らぬは人の 為さぬなりけり」という上杉鷹山の歌を念頭に,いろいろなものに興味をもち,研究(あるいは趣味)に取り組んできた.以前は,この歌を「何かを成し遂げようとする意志があれば,何事も達成することができる」,そして「できないのはやろうとしないからだ」と受け取り,努力すれば必ず報われるというような気持ちで,次々に多分野の研究に着手していた.ただし,多少なりとも経験を積ませていただいた今の身になると,この言葉は「努力が報われるかどうか」を問題にしているのではなく,「何かを成し遂げるためには,諦めずに強い意志をもってあたりなさい」という教えであるように感じている.
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