事例報告
小児自閉症の疑いを持つ小児に対する援助についての一事例
瀬谷 美子
1
1神奈川県立衛生短大
pp.420-432
発行日 1975年7月10日
Published Date 1975/7/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662205623
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I.はじめに
小児自閉症の概念が初めて打ち立てられてから25年を経た現在,今もなお,その概念や範疇が論じられている。原因論にしても全く混沌とした状態にある。こうした状態のなかでも我国においては,すでに1960年代は臨床心理学者がテストの研究から心理治療の研究にむかった時代である,と石井氏1)は述べているように,さまざまな方法で,自閉症児への治療教育に努力がなされた研究が積まれてきた。
現在自閉症児の出現率の調査は,日本においては行なわれておらず,東京都内での小学校学齢児6歳〜12歳のなかでの自閉症児は360人前後と推定され,その出現率は0.043%,すなわち1万人に4.3人の割合で,又種々の理由で就学猶予・免除になっている子どものなかにも3.7〜4.3%に自閉症児がいると推定されている。この出現率は,昭和39年にイギリスで調査された結果では,出現率0.045%,1万人に4.5人と記録され,東京都のそれとほとんど異ならないと情緒障害教育特輯号2)(昭和45年1月20日発行)に記されている。
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