特別寄稿
人体実験の原則について
小池 清廉
1
1三重県立高茶屋病院
pp.348-351
発行日 1973年5月10日
Published Date 1973/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662205284
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なぜ,学会が人体実験の原則問題にとりくめたか
1973年2月24日,日本精神神経学会理事会は,学会内に設けられた小委員会(後出)の提案した"人体実験の原則(案)"を承認した。医の倫理が叫ばれながら,目にあまる医療の荒廃がひろくゆきわたっている今日の状況のなかで,医学界内部の手によって,医学の進歩のためでなく,個人の人権を守るために,人体実験の原則の試案と,それにもとづいて機能する人体実験倫理委員会の設置が提案されたことは,わが国でははじめてのことだといわれる。この"原則"の提案が,医師・研究者ではなくて,患者・市民にアピールするものであったがゆえに,あるいは,その内容は患者・市民にとってはごく常識的なものであるが,それが医学界内部の手によってつくられたことに意味があると考えられたがゆえに,マスコミはこれを歓迎したものと思われる。この"原則(案)"はなお不十分なものであり,今後さらに修正されるべきものであり,いまだ学会総会で討論される段階に至っていない。それゆえ,"原則(案)"そのものを羅列するのでなく,その内容について以下に述べることとする。
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