声
古い保健婦と若い保健婦と
木村 ヤス子
1
1静岡県磐田郡佐久間町役場
pp.160-161
発行日 1973年3月10日
Published Date 1973/3/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662205239
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T保健婦さんは,佐久間町の私の先輩保健婦である。看護婦として長い間勤めていたのを,医師のいうままにしか働き得ないことに限界を感じて,40歳ごろになって保健婦学院に入学し,それから佐久間町の保健婦としていままで9年間活動してきた人である。私が,保健婦ってなんだろうと迷ってしまうとき,何をどう定義づけることもできないけれど,Tさんのやっていることが保健婦活動じゃないかと,実感として納得できる人である。
私が佐久間町に就職する前に,一度町を見に来たとき,町の先生方や役場の人たちが佐久間に来て,チームを組んで仕事をしてほしいとすすめられるなかで,Tさんは「私は保健婦になって7年目になるけれど,保健婦になってよかったと思ったことは,たったの1度しかなかったんですよ。それでも保健婦がやめられなくてね」と,そのたった1度のケースを話してくれた。そのとき私は,どうしてこれから保健婦になろうとしている私にそんな話をするのか,理解できなかった。でも実際に地域のなかで,保健婦という自分でも一言で説明しきれない職業についてみて,そのことばがほんとうによくわかる。いまの私には保健婦になってよかったと思えることがたったの1度すらない。それでもTさんと同じで,保健婦がやめられない。
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