特集 大衆保健薬
活性B1とくにアリナミンは効くか
高橋 晄正
1
1東京大学
pp.24-35
発行日 1970年8月10日
Published Date 1970/8/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662204734
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B1とアリナミンの違い
B1は体内に入ってデンプン質を代謝する酵素(コカルボキシラーゼ)の成分となる。健康成人での必要量は1日0.5〜0.7mgであるが,厚生省で安全性をみて決めた基準量は1.0〜1.2mgである。
ところで,私たちはB1をどのくらい摂っているかというと,数年前に厚生省や農林省でおこなった全国的な栄養調査によれば,どちらでもほぼ1mg前後である。B1が保存と調理で16%ほど減少することを考えても,私たちのからだのなかには0.8mg入るから,B1欠乏症はふつうに食事をしている人には見られないことになる。事実,5年ほど前の内科学会でも全国のあちらこちらでいろいろの負荷試験をしてみた成績でB1欠乏は100人に1人もいないだろうと報告されている。このことは,このごろ臨床的にもB1欠乏症と考えられる患者さんにほとんどお目にかかることがなくなったことと一致する。それは,大正いらい米の保存法がよくなり,またタンパク質を摂る量も増えてきたことに関係しているものと考えられる。脚気衝心も昭和になってからほとんど見られなくなった。だから,疲れ→脚気→B1欠乏という三題ばなしはもう神話になってしまったのだが,日本人のあたまのなかにはまだ強い信仰として残っている。
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