特集 病院の選び方
現代精神病院論
岡田 靖雄
1
,
小坂 英世
2
1東大病院精神神経科
2小坂診療所
pp.30-35
発行日 1970年7月10日
Published Date 1970/7/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662204716
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1.精神病院のもっている歪み
日本精神神経学会理事会は1969年12月20日づけで"精神病院に多発する不祥事件に関連し全会員に訴える"という声明(精神神経学雑誌,第72巻第1号)を発表し,これをおいかけるかのように朝日新聞は,本年3月5日から3月12日にわたって"精神病棟"と題する潜入ルポルタージュをのせました。ルポルタージュの対象となったのは,東京で中の下と評価される病院ですが,そこで患者さんの人権が無視されており医療が不在である姿は,患者さんの家族をはじめ精神科の関係者におおきなショックをあたえています。こういうときに,自分の患者さんをできるだけいい精神病院におくりたい,とおもうことはとうぜんです。
だが,ここではまず,"いい精神病院"などないのだ,あるいは,"いい病院"も"わるい病院"と共通の問題点をもっているのだ,という点を指摘しておきたいのです。たとえば,必要な限度をこえた患者さんの人身拘束をおこなっていないと断言できる病院,作業治療の名で患者さんの労働を搾取していないといえる病院がいくつあるでしょうか? 精神科医療の革命とさえ評価された薬物療法も,十分に技術化されないままにむしろ病院管理的につかわれ,"薬づけ"あるいは"薬しばり"とよばれる状態をつくりだしています。
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