沖繩の公看活動 第8回
バンビの大東島
浦野 元幸
1
1三重県衛生部
pp.58-59
発行日 1969年11月10日
Published Date 1969/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662204535
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§南から北島へ北から南大東へ
「前に何回となく約束しても天候の具合でいってあげられなかったし,今度こそ,ここまで来て北島(北大東)へ渡らなくては申しわけがありません。何とか船を都合してください。」何遍頼んでも喜納村長(南大東村)はもちろん金川助役もウンといってはくれない。「海上警報中ですから本船(那覇と南北両大東間を運航している船)を出せるように頼んでみます。とてもサバニは危険です,おやめになるように。」の一てんばり。同行してくれた以前の担当公看でこの島の出身,今は本島糸満駐在にいる松田とみ君がはたから私の背中をつっつく。さすが出身地で顔がきく。夜おそくまであちこちとび回って交渉してくれた結果,とに角翌朝早くサバニ(くり舟)を出してくれることに話がついた。やっと落着いて眠れる。
その翌朝暗いうちに宿を出て港にいく。港といってもこの南大東島には浜がない。すべて周囲は断崖絶壁,大平洋の黒潮にもろに洗われているのである。したがって港になっているのは水深,海底,風向,この条件から最適と考えられている場所でそこに停泊するのである。もちろん波止場なぞなく,荷役のためのクレーンがただそびえているだけ。
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