特集 都市の保健婦
勤労婦人の出産傾向およびその対策について
山下 章
1
1東京都麹町保健所
pp.28-32
発行日 1969年7月10日
Published Date 1969/7/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662204461
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1 勤労婦人の出産調査をした動機
私の受持地域である麹町保健所管内は,皇居を中心として,大手町,丸の内,有楽町,霞が関,永田町など,政治,経済,文化の中心地区であるために,夜間人口は3万5千にも足りないのに昼間人口は70〜80万に達するという,都市の中でも最も都市的なところである。保健所法の施行令の2条に,「保健所は,人口おおむね10万を基準として設置するものとする。ただし,交通事情,他の官公署との関係,公衆衛生状態,人口の分布状態などを考慮し,特別の事情があるときは,この限りでない」という定めがあり,後段の趣旨の中には,流動人口へのサービスというニュアンスもあるようにも考えられるが,前段の人口おおむね10万を基準とするという大原則があまりにも強く,保健所は定住人口すなわち夜間人口を相手とするんだというのが通常となっている。ところが,私のような保健所では,そのように割り切ることには大きな抵抗を感ずる。ベッド人口だけにサービスすれば,デスク人口は放置しておいてもよい,という感覚にはどうしてもなれない。とにかく,麹町保健所では,数年来許される範囲内で,ノルマの業務の余力をこの昼間人口の公衆衛生診断にあててきた。①ビル内の中小事業所の健康管理状況,②通勤労働者の医療機関の利用状況,③冷房ビル内の気温の状況と従業者の訴えなど。
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