特集 勤労婦人の保健
勤労婦人の健康障害と問題点
山下 章
1
1日本橋保健所
pp.264-269
発行日 1970年5月15日
Published Date 1970/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401204068
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母性保健と勤労婦人
もともと,母性というのは,女性の一部分や一時期をさすものではなく,むしろ女性そのものが母性に通ずると解すべきである.女児が成長するにつれて,女らしくなり,女性として成熟し,結婚し出産して母となる.みずからの子を育て終えると,さらに孫の世話をする.女性の一生は,母であることに終始しているといってよい.
しかしながら,なんといっても母性の第1の使命は,妊娠,分娩,そして育児であるといってよい.母子保健法の第2条にも"母性は,すべての児童がすこやかに生まれ,かつ,育てられる基盤であることにかんがみ,尊重され,かつ,保護されなければならない"と述べられている.したがって,母性の健康は,ひとり女性自身のしあわせのためばかりではない.健康な子を出産するためには,結婚前からこの使命に耐えうるに十分な,余裕のある高い健康度をつくりあげ,保持していなければならない.また,妊娠中の母体の健康に障害があれば,妊婦自身の生命をおびやかされるだけでなく,胎児の健康もおかされ,流産,死産早産,それに先天性障害や奇型の原因にもなるだろうことが推察される.
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