特集 高知駐在制の20年
帰郷者の結核
筧 基
1
1高知県本山保健所
pp.50-53
発行日 1969年4月10日
Published Date 1969/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662204405
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
駐在当初の結核問題(20年前)
私は昭和23年12月,高知県の駐在保健婦として大豊村に赴任して20年間現場で働いてまいりました。
駐在当時は農村といえども,敗戦の傷手から立上ることができず,食糧および物資不足にあえいでいる状態でありました。その悪条件の中で多くの結核患者が,家からはなれた小屋やはなれに隔離され,半ば家族からも見放されたような形で,淋しい毎日を送っておりました。もちろん,現在のようなパス,マイシンはなく,単に鎮咳剤と週1回位の往診による葡萄糖,カルシウム等の注射をする位で,訪問のたびに痩せ細っていく患者をどうすることもできず,部分的な清拭や,慰めとはげましの声をかけてあげるのが,せい一杯の方法でありました。
Copyright © 1969, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.