講座
結核療養者の安静問題について〔I〕
河上 利勝
1
1都立広尾病院
pp.121-127
発行日 1955年10月15日
Published Date 1955/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661909944
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1.まえがき
結核療養に安静の大切であることは広く知られていることでありますが,扨その理由はと披き直られて見ると,明快な説明は仲々難かしいのであります。これを理外の理として理窟抜きに肝要であるというには余りにも問題が大き過ぎると思います。そして療養所は現在では段々に病院化して参りまして,医師は患者の排菌源を捜したり,これを取り除いたり,又は其を虚脱したりする処置に忙がしくて,とても患者の精神教育にまで手が廻らない,時間がないというのが実情であります。
此の点看護婦諸君は日夜常時患者に接して,患者の為に食事を喰べさして上げたり,身体を清拭してあげたりして,療養生活の杖ともなり,柱ともなつて差し上げるのでありますから,知らず識らずの中に,その一挙手一投足や,何げなしに喋つた片言切句によつても患者の精神生活に影響することが極めて大きいと思われます。
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