特集 組織づくりと保健婦活動
都市住民運動とコミュニティへの新基盤
奥田 道大
1
1東洋大学社会学
pp.10-15
発行日 1968年5月10日
Published Date 1968/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662204182
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I.地縁的・血縁的結合体から機能的結合体へ
わたくしはかつて,新生活運動,貯蓄推進,あるいは社会教育関係のモデル地区,表彰地区を見学する機会をおおくもった。これらの地区に共通する点は,モデル,表彰の対象となる活動プログラムに熱心にとりくみ,実質的な推進役をなした特定の指導者がかならずいること。それから不思議とこれらの地区は,都市化のながれにとりのこされた農山村部,社会学的には血縁的・地縁的紐帯にもとづく共同体的規制がいまもって根づよいところがおおい事実である。熱心な指導者はその地区の住民になにがしかの影響力をもつ有力者でもある。
保健婦がこうした地区に入って所期の目標を達成しようとするばあい,住民ひとりひとりの説得も欠かせないが,それにもまして重要なのは,有力者をどうつかみ,協力態勢を,築けるかにあった。有力者をつかむことは,同時に,地区住民の利益代弁機関である部落の組織を利用できることでもあった。逆に,有力者を素通りにすれば,保健婦自体の地区内での孤立化をまねくことは,明らかであった。
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