保健婦さんへ 期待と提言
保健婦への讃美
伊藤 桂一
pp.9
発行日 1968年5月10日
Published Date 1968/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662204181
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私は現在のところ,保健婦というものに対して,一個の素朴で古風な讃美者であるらしい。なぜなら私はまだ保健婦の世界をわずかしか見聞していないし,それも,素朴で古風な,黙々とした挺身だけを使命感とする,高知保健婦に接しただけだからである。
しかし,私のこの体験は重要である。私の抱いている保健婦への讃美思想こそは,それだけが保健婦の存在価値につながるからである。私はたとえ,保健婦についてだれかが,時代の流れや,機構のむつかしさや,能力の限界やをいかに説いたとしても,それによって自身の保健婦観を妥協させようとは思わない。かりに戦場で歩哨が居眠りをしたとぎ,その歩哨が,実は昨夜よく眠れなかったのでとか,昼間の戦闘で疲れたので,とかいっても,それが理由にならないのと同様である。保健婦もまたいいわけの成立しないつらい職業である。それがいやならまず保健婦をやめるべきだ—という高知県の上村聖恵保健婦係長の明快な論旨に私も同感する。もともと保健婦は,そういう選ばれた資格の所有者なのだ,というそこに私の讃美観が根ざしている。
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