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精神障害者対策でノイローゼ/新産業都市と都市住民の生活
K
pp.49
発行日 1964年6月10日
Published Date 1964/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662203134
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ライシャワー事件の余波をうけて,精神障害者に対する世論がたかまり,また,障害者対策をめぐっての批判で霞ヶ関かいわいもにぎやかである.ところで,現在の精神障害者対策では例の事件を防止し得なかったかどうか.精神衛生法によって,保護義務者は,精神障害者に治療を受けさせるとともに,自身を傷つけたり他人に危害をおよぼさないように監督しなければならないことになっており,また,精神障害者またはその疑いのあるものを知った人はだれでも,知事に対してその者についての診察や保護を申しでることができるようになっている.一方,警察官職務執行法によって警察官は,異常な挙動や周囲の事情から合理的に判断して,精神錯乱のために自身または他人の生命・身体・財産などに危害をおよぼすおそれのある者に対しては,応急の救護を必要とする相当な理由があるときは,適当な場所に保護しなければならないことになっている.
これらの規定がそれぞれ十分に履行されていて,なお今回のような事件が発生する余地があるとすれば,当然に必要な新しい規定をつくることも考えられよう.しかし現実は,これらの法の規定の運用やその施策が不十分であったことのほうが問題であるようだ.たとえば,治療を受けさせるとしても精神障害者は貧困な世帯に多いことが,今回の精神衛生実態調査の結果でも明らかになっており,経済的な理由で治療が受けられない者が半数以上もいる.
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