特集 現代育児論
諸外国の保育政策—英米およびソ連の乳幼児保育施設
小川 正通
1
1大阪市立大学
pp.43-47
発行日 1968年2月10日
Published Date 1968/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662204117
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I.保育政策の基礎と必要性
(ゆりかごから墓場まで)のモットーのもとに,先進国における,一般大衆に対する福祉(教育を含む)増進策は,しだいに進められている。そしてその一部分として,いわゆる自由主義(資本主義)国家も社会主義国家も,少なくとも形式的には,同じく母子対策を重んじ,さらにその一環として,保育政策にもかなり力を注いできていることは,疑いえないところである。
一方,教育思想の観点からは,子女に対する家庭の意義と家庭教育の重要性が,歴史的にもまた今日においても,継続して主張されている。そして「ホスピタリズム」も引合いに出される。しかし家庭教育の基盤としての家族ないし家庭そのものが,ここ数十年の社会・経済事情を背景として,大きな変革を被った。すなわち増大する婦人労働の必然性や婦人の労働への要求は,伝統的な家族型態と家庭機能ことに教育機能に対して,強い影響力を及ぼした。そして教育機能につき,その限界をあらわすにいたった。したがって各国において,乳幼児の保護・指導は,かつてのように家庭と私的な慈善・宗教団体がそれに協力するだけでは,不じゆうぶんであって,国や地方自治体が,多かれ少なかれ関与しかつ施策を進めているのである。ことに働く母親の乳幼児に対する保護と教育には,家庭と公共的性格をもった公・私立の保育施設が,その責任を分担している。しかしその分担の様態や仕方は,国によって必ずしも同様ではない。
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