特集 現代育児論
日本の児童福祉政策—とくに保育政策
鷲谷 善教
1
1日本社会事業大学
pp.39-42
発行日 1968年2月10日
Published Date 1968/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662204116
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はじめに
主題に答えるためにまずわが国の児童福祉事業の沿革について簡単にふれてみよう。敗戦直後,政府がとった児童対策は浮浪児や孤児の収容保護に終始していた。戦争の犠牲者として大量に発生した彼らは大人とともに住居と食糧を求めて街頭に彷徨していた。しかし,それは日本の民主化をかかげる占領政策からは許されない現象であった。治安の上からも好ましい状態ではなかった。ここで地方自治体は警察や占領軍のM. Pなどの協力をえて,いわゆる「狩り込み」を繰返し行なった。
しかし,憲法制定によって基本的権利は当然子どもにも保障されなければならないことになった。それはもはや浮浪児,孤児対策といったような一時的,応急的処置で事足れりという性質のものではなくなってきた。しかも日本の子どもはほとんどといってよいほど権利を奪われていた。こうして憲法にもとづいて子どもの権利を守るための法律が制定されることになり,教育基本法,学校教育法,労働基準法などがつくられていくなかで,児童福祉法が登場してくるのである。
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