メディカル・ハイライト
環境音楽
森清 善行
1
1労働科学研究所
pp.58-59
発行日 1967年10月10日
Published Date 1967/10/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662204046
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音楽はわれわれの生活にとってきわめて密接な関係をもっている。クッションのよいソファーにすわって香りのよい煙草をふかし,温かいコーヒーなどを飲みながら,好きな曲を鑑賞するといったことは音楽の歴史からみればそう古いことではない。古来,音楽というものはもっと生活に直結したものであった。ギリシャ神話にでてくるオルフェは音楽の力で人間を善にも悪にも導くことができたという。またギリシャやローマ時代には音楽の治療効果がいろいろと議論されたらしい。まもなく地球人が月に乗りこもうというこの宇宙時代に,未開民族のなかには音楽や歌の力をかりて病人がなおせるものと信じているものがある。このように音楽と医療の結びつきは長いが,これと同じようなことが音楽と労働のむすびつきについてもいえる。エジプトでピラミッドをつくるときに,石を運ぶ労働に音楽をつかったといわれている。音楽の起源が労働にあるという説すらある。われわれの周囲を眺めてみても,田植えをするとき,茶をつむとき,山で木を伐るとぎ,漁夫が網をひくとき,船をこぐとき,馬子が馬をひくときなどにうたわれる歌である。田植唄茶つみ唄,木こり唄,大漁節,船唄馬子唄である。いまでこそ民謡として人々に愛され歌われてぎているがもとはといえば,どれも当時の労働にむすびついた労働歌であった。
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