特別寄稿
中性洗剤についての考え方
小谷 新太郎
1
1順天堂大学医学部
pp.46-50
発行日 1967年9月10日
Published Date 1967/9/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662204022
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普及のいきさつ
中性洗剤がわが国で使われかけたのは,もう10年以上も前のことであるが,その後急速に広く使われるようになった。昭和31年ごろ,私は厚生省の食品衛生課長をしており,食品衛生をよくするために対策をたてなければならない立場にあった。当時私はアメリカの食品衛生が飛躍的によくなったのは食品衛生の分野に清潔という観念を導入してからであるということ,清潔は消毒に勝るということなどをきいて,日本の食品衛生をよくするためには,なんとか清潔の観念を導入し,業務の人,消費者,家庭の人が清潔にすることに関心をもってもらうようにしたいものと考えていた。ちょうどこの頃,洗浄剤の新しいタイプのものとして,わが国で中性洗剤がつくられかけており,その洗浄力のすばらしいことを知った。これは食器をきわめてかんたんに清潔にしてくれる。当時は家庭では,脂肪性の食べ物をいれた皿やいれものは,茶腕などとは別にして,お湯をわかして石けんで洗うようにしなければならず,家庭の婦人のこのための労力も毎食のことであるので,たいへんであった。中性洗剤の出現で,こんな面倒なことをして食器を洗う必要がなくなり,しかもきれいに洗い上り,清潔のよさも体験されるようになり,食品の取扱いを清潔にしようという考えをもって頂くための一つの手段にもなった。
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