医学講座
中性洗剤—ABS—の性格
柳沢 文徳
1
1東京医科歯科大学
pp.57-60
発行日 1963年2月1日
Published Date 1963/2/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661911856
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洗剤に関する二,三のことば
洗剤Detergentが血管の中に直接入るというチャンスはまったくないことと思っていたところ,そういうこともありうるという話をきいて驚いた。というのは,注射器の洗浄に中性洗剤を用いているからである。もちろん,水洗を十分にすれば,用いた洗剤は除去されうるがあのような長筒のもので,起泡性の高い洗剤を用うると,水洗いが困難になり,ときには残存してしまう。現在普及しているABSは0.6ppm=0.6mg/L=0.0006g/Lというごく微量で,泡立ちがおこるわけだから,わずかでも,注射器にABSが付着していると,注射液を吸いこむと,そこに泡立ちが生ずるということになる。
ビンのようなものを洗浄するには低起泡性でかつアルカリの強いものを用うるのが普通であって,泡立ちの高いものは,注射器には向かないともいえる。哺乳瓶を洗剤であらい,水洗いの仕方が悪かったときに,赤ちゃんが下痢をしたという話もきく。これも洗剤が原因であるかどうかは,言明できないが,理論的にはありうることだ。たしかに注射筒についた油性の薬品を洗いおとすには,ABSは洗浄力が強いからよくおちるでしょう。注射器は異物が存在していないことが第一の条件であるということを忘れないでいただきたい。
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