連載 高齢化社会の福祉と医療を考える・25
嫁姑関係を文化人類学から考える[1]
木下 康仁
1,2
1立教大学社会学部
2(財)日本老人福祉財団
pp.920-923
発行日 1988年9月1日
Published Date 1988/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661922091
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今回と次回は,‘忌避関係’と‘冗談関係’という2つの概念を用いて嫁と姑の関係を考えてみたい.冗談ではなく,この2つはれっきとした文化人類学の学術用語であり,後述するように密接に関連した意味関係にある.忌避関係も冗談関係も,いわゆる未開社会の研究から導き出された概念であるが,それらが一体嫁姑関係とどうつながるのか不思議に思われるかもしれない.
私たちは一般に,未開社会は私たちの社会より発展の遅れた,低級な社会と考えやすいのだが,決してそんなことはない.文化人類学が明らかにしてきたように,人間の社会は,物質的,技術的違いやその結果としての生産力の違いはあるものの,人が共に生きていくという点においては,本質的な差はないのである.
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