コーヒーブレイク
ルツ記にみる嫁と姑
O. T.
pp.73
発行日 1982年1月1日
Published Date 1982/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543202431
- 有料閲覧
- 文献概要
昔は嫁いびりの姑が多かったと聞くが現在では姑いびりの嫁の話を耳にする.いずれにせよ一つ屋根の下に世代の著しく異なる二世帯が同居することはとかく問題が生じやすいようで,核家族化の傾向は今後ますます強くなるのかも知れない.
旧約聖書の中にルツ記というわずか8ページ足らずの物語がある.この中には主人公であるルツのほかその姑であるナオミ,ナオミの夫の親戚であるボアズが主な登場人物である.物語は飢饉のためナオミは夫と二人の息子とともにユダのベツレヘムを去り,モアブの地に行くところより始まる.ナオミはその地で夫を失い,二人の息子は各々モアブ人の妻を娶るが,やがて二人の息子も死んでしまう.そこでナオミは残された二人の娘(息子の妻)に母のもとに帰って再婚するように勧める.二人の娘は残されたナオミを気づかい,共に暮らすというが,ナオミが再三母のもとに帰ることを勧めるので一人の娘はナオミのもとを去る.もう一人の娘がルツで,彼女はナオミを助けるべく固く決心する.ナオミはルツの意志が固いことを知り彼女を伴って夫の一族の住むエルサレムの町に悲しみを背負いつつ帰ってくる.そこでルツは田畑に行き落穂を拾ってナオミとの生活を支えるのであるが,そこで裕福な親戚の一人ボアズにめぐり合い,彼は彼女を助ける.そしてルツとボアズとのロマンスが実り,二人は結婚するのである.この物語の中には深い悲しみをも乗り越えた美しい家庭生活が描かれており,登場人物の会話にはお互いに相手を気付かう思いやりの心がにじみ出ている.
Copyright © 1982, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.