特集 マスコミュニケーションと公衆衛生
マスコミとは
山中 正剛
1
1成城大学
pp.612-617
発行日 2000年9月15日
Published Date 2000/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401902356
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情報娯楽
今度の選挙を前にして,小渕恵三前首相の次女優子さん(26歳)が,新聞・テレビ・週刊誌などに頻繁に登場するようになった.後継者として次期選挙に出馬するかどうか,要するに政治家の地盤と議席を守るための世襲の問題が争点になってよいはずなのだが,候補者の容姿や振る舞いなど俗に言う話題性にアピールするように描かれている.優子さんは成城大学経済学部の4年前の卒業生で筆者は直接教えたことはないが,身近なこととして半分興味本位に見聞きしていた.要するに筆者としても一種の情報の娯楽を楽しんでいたわけだ.
6月2日「週刊朝日」は「小渕前首相の後継(本命)次女・優子さん人柄は父譲り」などといった見出しをつけたグラビア写真を掲げ,「東京新聞」5月18日付の社会面は,「出ますか 優子さん」のトップ見出しに添えて,父の遺影を持った優子さんのクローズアップされた顔写真が写し出され,「弔い合戦再び 小渕家・後継」,「顔知らない」,「かわいそう」,「出れば圧勝だが」などの小見出しが踊っている.下地には「かわいそう」など新派のセリフもあり,「弔い合戦」などやくざ映画のタイトルもある.「マスコミ」の選挙報道は映画やお芝居をまねているのだが,日本人の情緒性をよく示す例だ.「転換期の政治」だなど新聞もテレビももっともな番組や記事を提供しているのは確かだが,「マスコミ」報道の本命は娯楽で成功した手法を取り入れた情報娯楽だろう(図1).
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