特集 医療と公衆衛生
医療制度と保健婦
のぞみちゃんの死をめぐって
井出 そとえ
1
,
木下 安子
2
1東京都梅ケ丘保健所
2東京大学衛生看護学科
pp.79-84
発行日 1965年3月10日
Published Date 1965/3/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662203343
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私自身生命があぶなかった
Kさん,なん年前だったか健康保険本人でも初診料100円が自己負担になったころから,年々医療制度が変えられ,ついに最近では看護の問題にまで立ち至ってきています.このままでは一番たいせつな生命の存在すら安易に扱われてしまうという憤りにも似た思いで「看護をよくする会」に参加し,どうしたらもっと生命をたいせつにすることができるかを学んでいた私自身が,生命の瀬戸ぎわまで追いつめられたそのころの記録を紹介して,ともに考えていただきたいと思いペンをとりました.
9月9日
朝いつものように長女(1年9カ月)をベッドから抱き起こした瞬間,プツンとした感じ"アッ"と思わず胸うちがひやっとする.やはり出血,あわてて横になり祈る思いで腹に手をあてる.幸い胎動は変わりなく活発.10時,夫とともに受診,「切迫早産子宮口開大二指」との診断でただちに入院.一番恐れていた前置胎盤でなくてホッとする.予定日は12月1日,まだ2カ月あまりある.用心しよう.それから11目まで,くる日もくる日も安静.ようやく排尿だけ室内でベッドから降りてすることを許される.
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