特集 医療と公衆衛生
国民の健康の現状と医療制度
人間尊重は公衆衛生から始まる
水野 肇
1
1医事評論家
pp.64-67
発行日 1965年3月10日
Published Date 1965/3/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662203338
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1年間に10万人が死ぬ
"大気汚染は慢性の死の灰である"といわれている.公衆衛生学者の間では,この大気汚染によって1年間に10万人が死んでいるとさえいっている.10万人という数字が大きいか小さいかはともかくとして,都市生活者の頭上に"大気汚染"は重くのしかかっている.
ところで,この大気汚染について,どれだけの防止策が行なわれているだろうか.企業誘致や新産業都市の大きな掛け声の中で,厚生省の公害課でほそぼそと対策をねっているという段階にすぎない.大気汚染の2大汚染源である石炭と石油,つまりスモッグとスメーズのうち,煤塵予防には,120トンの製鉄工場の煙突につける集塵器が1基1億3千万円も必要であるし,亜硫酸ガスのほうはほとんどお手あげに近い状態である.このままでは,ますます大気汚染はひどくなるばかりで,とても解決の方向に1歩踏みだすことだってむずかしいといわねばならない.
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