特集 医療と公衆衛生
国民の健康の現状と医療制度
危機にひんしている医療保険財政と国民の健康
吉田 秀夫
1
1法政大学
pp.60-63
発行日 1965年3月10日
Published Date 1965/3/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662203337
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
国民の貧困化がすすんでる
「国民の健康はどう守られているか」という問題の提起には,少なくとも,病気になる前の,日常ふだんの国民の生活の現状はどんな状態にあるかということが究明されなければならない.労働者,農民,市民といった階層別にどのような労働条件,生活環境にあるかである.まさに健康維持のため,もっとはっきり言えば,憲法25条でいう,すべての国民は健康にして文化的な最低限度の生活を営む権利があるという,この国民のひとしくもっている権利としてのまともな生存権が,脅かされていないかということである.
とすると社会的経済的にわが国の基盤を問題にしなければならない.それでは問題が大きすぎるし,公衆衛生と医療の特集号にはふさわしくないかもしれない.国民と言っても,ここでは,富裕な階級の人びとを対象にする必要はないであろう.主として労働者大衆,農民市民大衆を問題にしたい.この国民大衆の健康を測定するにはいろいろな角度があるにちがいない.私はこれを3つの点から問題にしてみたい.
Copyright © 1965, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.