連載講座 公衆衛生活動のための精神衛生学・2
人間尊重と人間関係
進藤 隆夫
1
1国立公衆衛生院精神衛生室
pp.558-561
発行日 1964年10月15日
Published Date 1964/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401202906
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
■公衆衛生と人間尊重
公衆衛生の背景をなす社会的基盤は戦後に一大変革をこうむった。それは社会と文化面における.民主主義への変革であった。統治構造は全体主義から民主主義にかわり,新憲法によって法治主義が確立した。行政は中央集権主義から地方分権主義に,官僚行政から民主行政へとかわった。言論,宗教,思想の自由と基本的な人権尊重が確立され福祉国家建設の目標が国民に明示された。憲法第25条の理念にもとついて衛生行政の機構や制度上に諸改革がおこなわれた。労働基準法,児童福祉法,結核予防法などの制定があり,国民皆保険方式による医療制度が達成された。
国民の福祉のために最低限必要なこれらの施策の樹立の作業が終ったころ,公衆衛生活動のなかに新しい動きが萠した。今までのような他律的な動きから自律的な動きへの転換がそれである。つまり,市町村の自主性とその主体性の尊重の気風が生まれた。地域社会の住民の自主的ニードとその日常生活の尊重の考えが発展した。公衆衛生も医療も社会福祉も,この立場から有機的に総合されることの必要性が強調されるようになった。市町村は公衆衛生と社会福祉を総合した地区組織活動に積極性を示した。市町村は仙の機関からの技術援助のもとに主体性をもって地区の問題発見と問題の分析と対策の樹立をおこない,共同保健計画を実施した。
Copyright © 1964, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.