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患者の心理を知ること
pp.61
発行日 1957年11月1日
Published Date 1957/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611201375
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ある新聞の投書の欄にこんな内容の投書が掲載されていました.「私が入院した病院では退院する際にいくらかずつ看護婦さんに包むのが習慣で,そうしないと後でまた行くときに何となく肩身のせまい思いがします.こういうことはせい一杯の予算で入院する私どもにとつて大へん困惑しますが,この点どうすればまいのでしようか.」もちろんこの答えとして,病院当局は「そういうことは看護婦にきびしく禁止しているし,看護倫理の上からいつてもしてはならないことである.」とここまではありきたりの文章ですがそれに続けてその院長さんは「……しかし本院は産院としての性質上患者さんから赤ちやんの出産祝いとして,いろいろ頂くのはある程度黙認することもあります.お祝をことわるのも妙なもので…….」
こういう例は案外多いと思います.患者さんとしては産院に限らず本当に純粋な気持から何か看護婦さんの親切な行為にお礼したいというのは人情で,この点については開業助産婦さんと病院看護婦さんとは条件が違うでしようが,患者さんにこういう投書を出させたとすれば,その病院は必ずしも患者に親切であるとはいえないでしよう.看護技術の訓練とともに,それぞれ異つた環境に生活する患者一人一人に何の心配もなくベツドの上に休ませなくてはならなかつたはずです.
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