講座
先天異常の内因と外因—母性保護を新しい見地から
渡辺 厳一
1
1新潟大学医学部衛生学
pp.35-39
発行日 1963年9月10日
Published Date 1963/9/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662202923
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遺伝的荷重
人間の社会は,遺伝的にみて,みなちがう個体の集団である.加うるに,それぞれは千態万様の環境下にあって,おもいおもいの生活を営んでいる.この間にあって,社会生活に適応できない個体は滅んでゆく.「不適者不生存」の原則は,ひとり人類のみならず,生物全体にあてはまる不滅の大法則である.
まずはじめに,受精により生じた接合体が,淘汰されてしまう割り合いを考えてみよう.ここで人工妊娠中絶は計算にいれぬこととする.妊娠初期,母がまったく気づかず流産するものは,約5%ある.妊娠6カ月までに,自然流産と認められて消滅するもの10〜15%,それ以降,胎児の死亡による死産が5%程度,しめて,全体の1/4はこの世に生をうけず消えてゆく,と推定される.
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