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長野県における保健活動の実際
柳沢 利喜雄
1
1千葉大学医学部
pp.39-47
発行日 1963年7月10日
Published Date 1963/7/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662202878
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第1 長野県—僻地農村における保健状態について
1.はじめに
長野県下伊那郡阿南町和合は,長野県の代表的農山村の一つであって,従来は第2種無医地区であった.昭和35年5月始めてここに厚生省の僻地対策として診療所が設置され,現在まで千葉大学農山村医学研究施設でここの地区の診療と研究をやっている.地域の概要を示せば,交通は飯田線温田駅より20km,バスは1日2回往復,面積は60km2であって,山林面積が86.1%,したがって適住地は13.6%しかない.第1図は和合の人口構成である.昭和30年と37年と比較すると,若年層に人口の減少が著明であり,老人層には多少ながら人口増加が見られる.第1表は人口を示している.昭和30年の和合の人口は1,447人だったのに昭和37年には1,189人に減少している.
第2表は職業別戸数である.このような僻村では職業の60.8%が農家であり,農家の多くは製炭を手伝っている.ところが最近製産される木炭は現在の社会変革でだんだんその需要が激減しつつある.第3表は所得階層別世帯数である.住民の所得は非常に低いことがわかる.この地区の家族人口構成は1戸当り4.6人であるから,平均一人当り月間所得を2,000円とすると1戸当り10,000円そこそこである.いかに貧しいかが想像できる.
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