連載 おとなが読む絵本——ケアする人,ケアされる人のために・166
ドングリ1個からの人生哲学
柳田 邦男
pp.584-585
発行日 2020年6月10日
Published Date 2020/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1686201615
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4年ほど前の秋,近くの森林公園を散策していたら,ミズナラの木の周囲にドングリがたくさん落ちていた。可愛らしかったので,数個を拾って持ち帰り,書棚の上にさりげなく飾るように並べておき,1個を鉢に盛った土に埋めてみた。
冬になってからも,土が乾き過ぎないように適度に水やりをした。年が変わり,春の日射しが心地よくなった頃,鉢の土から新芽がちょっぴり出ているのに気づいた。土の表面を割るようにして,薄緑色のわずかに開きかけた新芽がこの世界をおずおずとうかがうように突き出ているではないか。2日ほど経つと,新芽は双葉になり,表皮を脱いだドングリが新芽の成長に引っ張られたのか,半身を土の上に露出させた。
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