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「現代つ子」と水道方式
栗原 弘
pp.10
発行日 1962年6月10日
Published Date 1962/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662202584
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戦後の一時期アプレといわれたわれわれの世代も,いまは社会の中堅として活躍している.某日,昔は大いに共に青春を謳歌した友人にあつた.社会の荒波にもまれてか髪もうすくなつてきている.子どもが2人いて,上は小学校2年だと聞かされ,思わず懐旧の情にかられてお互い失笑したものだ.
ところで彼の話――「坊主が学校へあがつてから家庭教育がきびしくてお手上げだよ.オチオチ横にもなれない.自分の居間を持つ程立派ではないし,こつちは通勤ラッシュで疲れはて,家へ帰つてビールでものめばゴロリ横になりたいし,新聞や軽い読物などまともに机に向かつて読むはずはないじやないか.するとうちの奴がいうには,――シツケとかなんとかで,きびしくいうんじやなくて,あなたのそんな態度が,子どもにしつかりした本をチャンと読ませなくさせるのよ.父親が一度も机に向かわなくて子どもにはチャンと机の前で勉強しろなんて言つてキキ目はないのは当然よ--というわけだ.最近のレジャー時代で,テレビから子ども雑誌から漫画本から,安易な生活態度が最高だといつた式の教訓?がいやおうなく子どもに叩きこまれてくる.その一助をかつているのがあなたのそうした態度です,とこうくるわけだ.
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