特集 水道問題の展望
工学的水道管理について
石橋 多聞
1
1厚生省公衆衞生局水道課
pp.28-32
発行日 1955年5月15日
Published Date 1955/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401201560
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1.まえがき
わが国の上水道は昭和29年度の調査によれば施設数1,171箇所で現在給水している人口は22.825千人,1日の配水量は約7,118千立方米である。これは法律による規制を受けている企業のみの数字で,この他に自家用水道,部落営の簡易水道等の小規模のものが沢山にあるがこれらは目下の処正確な統計がないので詳かでないが,恐らく数千箇所に上るであらう。これらの水道が消化器伝染病の防遏上果している役割は高く評価されて然るべきである。
昭和26年に水道を有する市町村と有しない市町村とを任意抽出法により,その消化器系伝染病の発生率を調査したが結果は次のようであつた。即ち昭和22〜26年間の1万人当りの平均患者発生数は,全国平均で水道のある市町村については,7,4人であつたが,水道のない市町村については16,6人であつて水道が防疫上果している効果を如実に物語つている。然し乍ら水道は良好に維持管理されている場合は防疫上の尖兵としての役割は大きいが,この反面一旦その管理を誤る時は逆に伝染病伝播の道具と化し消化器伝染病の集団発生を見る事は過去の幾多の事例が示している。因みに昭和25年以降の水道流行の事例は43件ありこれらは殆んど全部小規模の水道で維持管理の不良に基因するものである。水道流行の疫学的特微は給水区域全般に範囲が及ぶことと,このうち水道利用者に限つて患者が発生する。
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