特集 水道問題の展望
水道と弗素
北 博正
1
1東京医科歯科大学医学部衞生学教室
pp.49-51
発行日 1955年5月15日
Published Date 1955/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401201563
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水道と弗素の問題に関して述べるには,斑状歯のことから説き起こす必要がある。
斑状歯とは歯牙(特に永久歯の前歯部)の表面にあらわれる白濁乃至褐色の汚い斑点があらわれる歯牙の異常であつて,既に今世紀の初めに報告例があり,その後,米国の西部地方で特殊な歯牙異常として注目されて来たが,1916年BlackとMckayによつて詳細に研究され,はじめて「エナメル質の地方病性形成不全」として報告されたもので,特定の地域に集団的にあらわれることが多いため,何か共通の原因があるのではないかと,いろいろなものが考えられていたがMckayとBlack(1916),Pierle(1926)は飲料水中に何らかの原因が存在することを唱えたが,当時の検査方法では何等の手懸りも得られなかつた。しかし斑状歯をもつ兒童の常時飲用する井戸水で動物を飼育すると,幼獣では人間同様に斑状歯が発生することから,飲料水中の未知なる微量の物質に基因することを予想せしめたのである。
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