保健婦学生の手記
学生夏休みアルバイトの感想
岩沢 祥江
1
1神奈川県立公衆衛生看護学院
pp.120
発行日 1961年11月10日
Published Date 1961/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662202457
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1.勝山臨海学校引卒に参加して
"身体の具合の悪い人のお世話をして下さる岩沢先生です"と紹介されて2日間,にわかずくりの"先生"の身分を保たなければならなかつた.子供たちからのみならず年輩の先生方からも"……ね,先生"と話しかけられると,今まで先生と呼ぶ身からの180度の転換に,心の中で苦笑せざるを得なかつた.海浜の生活,殊に小学生の生活指導を兼ねた臨海学校は誠に先生方にとつて骨の折れるものだと感じた.5,6年生260名,大きな怪我,大きな病気もなく,横浜から往復4時間の船旅も無事に終わつた.じりじりと照りつける午後の海岸,テントもなく治療台もない砂浜で傷口の手当をするのは容易な仕事ではない。貝殻や石ころで足を切つてくる子供.砂をかけられて眼をあけられない子,のぼせて鼻出血をした子……等々.きれいな水を得られないこの場所では,砂だらけの足も海水で洗い落とすことしかできない.材料も器具も十分揃い,治療の場として能率的に作られている病院の外来とは違うのだ.一つ一つのことに戸惑いつつ,臨機応変にその場を工夫することがいかに重要であり,また訓練が必要であるかを痛感させられた.これからわれわれが出て行こうとしている公衆衛生の分野においては,すべてこのような態度が必要であろう.たとえば家庭訪問においてその家庭にふさわしい指導をなす場合などに.
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