特集 日本の医療制度
日本の医療制度—その歴史と問題点について
佐分利 輝彦
1
1厚生省医務局総務課
pp.11-17
発行日 1961年4月10日
Published Date 1961/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662202302
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1.はじめに
一国の医療制度の現状は,医療に関する社会慣習と医療保障制度の歴史の所産である.しかし,わが国の医療制度は,その発足以来ほぼ90年を経過するにいたつたが,欧米諸国の制度のように歴史的・経済的な発展に即応して,自然発生的に形成されたものでなく,明治以来たえず外界からの刺激によつて制度的な発展をとげたところにその特色がある.
特に,わが国においては,社会保険などの医療保障制度の歴史が新しいために,医学医術は今世紀のはじめ以来飛躍的な発展をとげたにもかかわらず,医療制度は明治以来の自由開業,自由診療を基調として組立てられているので,その近代化と合理化があらゆる面で遅れており,その欠陥が本年3月末で達成された国民皆保険計画の進展と,最近の医学医術の急速な発達とによつて表面に現われてきたのである.
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