特集 医療保障と健康保険制度
日本の健康保険制度—その特色と問題点
佐口 卓
1
1早稲田大学
pp.32-36
発行日 1968年1月10日
Published Date 1968/1/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662204095
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
階層性と分断状況
健康保険それ自体についてみれば,保険経営の主体として,政府管掌(政府保険)と組合管掌(健保組合)に分かれていることはすでに知られるとおりである。そして政管保健が主として中小さらに零細企業などを対象としているのに対して,健保組合は,大企業に限定されている。この2分された制度においてはどこが異るかといえば,保険料負担,給付内容,などにおいて健保組合のほうがすぐれていることはいうまでもない。健康保険が被用者にたいする疾病保険であることは論じるまでもないが,とくに所得の低い階層にたいしての労働者保護という社会政策の問題でもあった。ところが,わが国の産業におけるいわゆる二重構造の反映として,大企業とそれ以下の規模のところで,内容の異る制度をつくりあげるという結果となった。すなわち,労働条件のよい大企業では,企業ごとに健保組合を設立運営することができるが,それ以下のところは政府が一括して経営する政管健保に加入するということであった。ところが,現在においてもそうであるが,五人未満の零細事業所はこの健保の加入が拒否されているのである。他方において被用者の範疇に入る日雇労働者にはとくに日雇健康保険が別途につくられており,その内容は政管健保より劣ることはいうまでもない。したがって,五人未満の零細事業所で働くひとびとは被用者としてでなく一般国民ということで国民健康保険のほうに加入せざるをえないのである。
Copyright © 1968, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.