特集 ポリオ
ルポルタージュ
ポリオの子を育てて—小林絹子さんとの会話
所沢
1
1編集部
pp.57-59
発行日 1960年12月10日
Published Date 1960/12/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662202234
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大きなランドセルが,小さな体にようようなじみはじめた頃,学童帽の下の顔が陽やけして,小学校の1年生が板につきはじめた頃,1学期もどうやら終りに近ずいた初夏のことであつた.小林操ちやん達のクラスは,先生につれられて,はじめてプールに行くことになつた.「夏休みに海に行つた時に泳げるよう練習するんだ」とはり切つた操ちやんは,新しい海水パンツを手にお母さんの注意も上の空で,とびたつように家を出て行つた.初夏の強い陽がてりつける暑い日であつた.だがしばらくすると,元気いつばい飛び出して行つたはずの操ちやんが,真赤な顔をして,なにか,力なく帰つて来たのだつた.思わず額に手を当てて見ると,ひどく熱い.検温して見ると9度6分「プールに入つたけれど,冷たいからすぐ出て,みんなの泳ぐのを見ていたんだ.給食の時も,パンが食べられないで残してしまつた」と操ちやんはいう.それにしても,どうしてこんな高い熱が…….お母さんは,いそいで近くの病院の先生に往診をお願いした.しかし往診して来た若い医師の診断は,「カゼ」ということで,ほつとして,せつかく無欠席で過ぎた1学期の病気を惜しむ余裕もでて来たのだつた.
高熱も,子供のよくやるへんとう腺位と軽く考え,ペニシリンと下熱剤の注射をしてもらつているうちに,2日目には熱も下り,子供はもう元気に起きはじめ,3日目には,登校するまでになつた.
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