おたより
第15回公衆衛生学会に参加して
南 好子
1
1大阪府池田保健所
pp.57-58
発行日 1960年1月10日
Published Date 1960/1/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662202012
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毎年7000円のお金をためて,公衆衛生学会に出かけていく—という若い保健婦の学会印象記である.今年もまたお金をためて第15回公衆衛生学会に出かけて行つたという.彼女達は夢中で何かを探している.自分達の仕事の支えになる理論を.あるいは増進していくことの出来る力を.その勉強への意欲とエネルギーばすばらしいものだと思う.
初日,午前,シンポジアム乳幼児の精神衛生はかねがね参考図書を探して勉強したいと思つて居たので,非常に期待して参加した.最近とみにマスコミで取り上げられた育児ノイローゼに就いて,お茶の水女子大家政学部の平井信義先生のお話しは,種々な点で母子活動に参考になつた.先生の主張された点は,乳児ノイローゼと言われる問題行動は,本人自身に問題発生の原因を見出せず,むしろケースの母親の育児に対する精神態度に依つて起るものである.だから,問題児が相談に来所した場合に,その母親とカウンセリングを重ねる事により,乳児の問題行動を除整してゆく事が出来ると言うことである.国立精神衛生研究所の高木四郎先生は,母子の関係に限定されず,物質的,心理的環境に子供の性格行動異常の原因を追求されて居る.性格異常の医学的治療の内,病状除去,免疫投与は子供の治療によるが,病因除去には,子供の母親の治療が必要である.そして,それらの環境なり親子関係と言うものが,そのバツクにある文化環境即社会というものに強く支配されて居るのである.
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