特集 公衆衛生への提言
政策・行政
参加する公衆衛生行政
中川 米造
1
1大阪大学医学部医学概論
pp.523-524
発行日 1976年8月15日
Published Date 1976/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401205232
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高度経済成長の蔭で
公衆衛生行政は,どうやら頭うちというか,手づまりというか,ともかく,ますます社会からの風当たりが強くなって,すこし大ゲサな表現だが,まるで四面楚歌といった感じである.一般的にいって,公衆衛生行政の担当者たちは,大蔵省や通産省の官僚たちと違って大企業や産業への傾斜はなく,直接,国民のためのサービスマン,国民の健康のための奉仕者をもって任じている人々が多い.高度経済成長時代,彼らはずっと日蔭者扱いにされながら,それでも国民の多面的な要求に応えるよう精一ぱいの努力はしてきたし,そのため少なくとも平均寿命とか,乳児死亡率とか,主な国民の健康指標に関する限りでは,一応先進国なみになってきたといえる.
それにもかかわらず,これほど風当たりがつよいというのは,基本的には高度経済成長による歪みが遅れてふきだしたということであるが,それに対応する行政の態度が,やはり基本的には高度経済成長時代の方式をそのまま踏襲しているところにその根があるのではなかろうか.高度経済成長を可能にしたのは,技術革新の積極的導入による合理化であり,マネージメントの面からみれば,官僚化の強化である.規則や基準,手順などを精細に定め,これらを計量的・客観的に動かすことである.
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