特集 新・保健婦論
地域保健と保健婦事業
田中 恒男
1
1東京大学保健管理学教室
pp.86-90
発行日 1974年2月15日
Published Date 1974/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401204801
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保健婦事業の帰趨が多くの論議を呼んでいることは,すでに衆知の事実である.昭和38年厚生省医療制度調査会がその答申を提出し,その中で保健婦を含む看護職種の機能について一応のとりきめを行なったが,いわゆる看護の専門性から考えるとき必ずしも納得のいくものとはいい難いものであった.同答申が如何なる理由か,現実に施策化されていないため保健婦の機能に関する制約が生れていないことは,一面では保健婦自体の主張をもとに,その業務規定を再構成しうる余裕を残したものだともいえる.
しかしすでに知られるように,わが国の保健婦業務は,欧米の公衆衛生看護事業とは独立した発達の仕方をしていることから保健婦とは何を専門機能とするかについて明確な主張を提示しにくい各種の事情もあったと考えられる.少くとも,欧米の公衆衛生看護婦が公衆衛生という方向への志向より看護そのものへの志向が強いのに反しわが国の場合そのあたりの認識はまちまちであり,時には看護と対立する姿勢すら示すこともあることはおそらくわが国にあっての独特な光景であろう.
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