編集者から読者へ
「ヒマワリさん」
所沢 綾子
1
1編集部
pp.10
発行日 1959年1月10日
Published Date 1959/1/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662201785
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「ヒマワリさん」とは昨年の1月から,東北,信越のローカル新聞に連載された,作者由起しげ子の小説の題名です.そして今度単行本になりました.ヒマワリさんの愛称で呼ばれるこの主人公は保健婦です—と私が説明するまでもなく皆様はすでにお読みになられたことと思いますが.
私はこの小説を読んで感激してしまいました.まず由起しげ子という作家が保健婦の仕事を大変理解していることにうたれました.氏がこの小説を書くに当つては,多くの保健婦と語り,信州の山奥まで現地見学に出かけて行つたと聞きます.それにしても農村の復雑な人間関係の中で,こつちにぶつかりあつちにぶつかりして本質とはおよそかけはなれた事件の渦に巻き込まれたりしながら何とか仕事を押しすすめていこうとする悲しい程熱心な保健婦の姿がよく描かれております.そして小説としても,アメリカ帰りのドライボーイや都会の週刊誌というはなやかな脚光を浴びる世界に住みながら,それ故に空白を感じている青年や,仕事に熱心なあまり,いつか婚期を失つた保健婦学院の先生等が登場して豊富にプロツトが組まれており,保健婦を知らない人々をも結構面白くひきずつて行く迫力があります.
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