特集 国民健康保険と保健婦
国民健康保険と地域の乳児死亡
西尾 雅七
1
1京都大学
pp.49-52
発行日 1958年12月10日
Published Date 1958/12/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662201780
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国民健康保険は昭和13年に,悲惨な敗戦に終つた侵略戦争の遂行と深い関連をもつて制定されたものであるが,今日では社会保障制度審議会の「医療保障制度に関する勧告(昭和31年)」の中に性格づけられている様に国民皆保険の実現への大きな支柱となつている.したがつて,制定当時の農漁村における医療費の家計に加える重圧を解決し,併せて農漁村に医療を普及しようという表面に採り上げられていた動機が文字通りの意味で実現される日が近づいて来ているともいえるのである.
国民健康保険を施行することが,はたして医療の普及に役立つか否かを明らかにすることは公衆衛生学的な立場においても必要であると考えたので,昭和27年京都府下の農漁村で国保を施行している村と施行していない村とを対象として医療状況の調査を行つた.その成績を通じて,この問題を眺めてみようと思う.さて調査した国保施行村は6カ村であり,国保非施行村は2カ村であつたが,前者の中2カ村では抽出家庭についての診療報酬請求書しか整理できなかつたので,これを除き悉皆調査を行い得た4カ村の資料により,また国保非施行村では,かかる資料が存在しないので全世帯の3分の1の抽出家庭を訪問し.世帯員一人一人について昭和27年1月1日より6月末日までに医師の診療をうけた疾病について問い正した資料によつて集計整理を行つた.
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