特集 国民健康保険と公衆衞生
国民健康保険と公衆衛生
西尾 雅七
1
1京都大学
pp.464-467
発行日 1958年9月15日
Published Date 1958/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401202009
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
昭和31年11月,社会保障制度審議会は「医療保障制度に関する勧告」を政府に提出したが,その中で国民皆保険への途として,1つは被用者5人未満の零細事業所に対する健康保険の実現と,他の1つは国民健康保険の設立を強制化する方策を講ずることを挙げている。かくして,国民皆保険を実現し,それによつて医療扶助にも該当せずまたいかなる医療保険からも締め出されている国民にも―それは全国民の約3分の1と見做されているが,―医療における機会均等を実現せしめ様としている。しかし,わが国の医療保障制度を構成している諸制度の間には,その最も重要な部分である療養給付においてすら質的な差があり,また夫々の制度が対象としている被保険者にも社会的経済的な条件における格差が認められる状況である。したがつて国民皆保険が実現したからといつて,直ちに国民のすべてに真の医療の機会均等がもたらされるとは到底考えられない。現に,各種の医療保険の被保険者の受診率に差が認められ特に組合及び政府管掌健康保険,各種の共済組合,船員保険等の被保険者の受診率は日雇労働者健康保険,国民健康保険等の被保険者の受診率に比して格段に高率であつて,昭和30年においても,前者は後者の約倍の受診率を示している。
Copyright © 1958, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.