特集 国民健康保険と保健婦
国民健康保険と公衆衛生
伊部 英男
1
1厚生省国保課
pp.16-17
発行日 1958年12月10日
Published Date 1958/12/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662201770
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昭和35年度を目途とする国民皆保険は着々と進行しており,本年も新規増加被保険者11月までで386万人の見込みであり,昨年同期に比較し,66万人上廻る見込みである.今や,国民の医療は,地域保険たる国民健康保険と,職域保険たる健康保険の2本立によつて達成されようとしているのである.勿論,内容的には,今後なさなければならないことは少なくなく,特に,国保の内容の向上は刻下の急務であり,目下臨時国会で審議されている国民健康保険法案は,その基礎となるであろう.全国民が医療保険の対象となるということは,極めて重大なことであつて,医療保険としても,医療としても今後,基本的に検討しなければならない問題が少なくないのである.医療保険のみをとらえても,例えば,診療報酬の問題にしても,現在の支払方式では,患者が多くなければ,療養担当者の生活は保障されないしくみであつて,もし,疾病の予防に挺身して,その目的を達成したとすれば,経済的には却つて恵まれない結果となるのであつて,これらの点更に工夫を要する問題が少なくない.
国民健康保険は,疾病の治療を目的とするものであるが,疾病が無限に増大するとすれば,当然事業は成立たないので,事故を未然に防止することが望ましいし,個人としても,病気になつたときは,経済的に苦痛少なく治療を受け,治ゆすることは望ましいが.病気にならなくてすめばこれにこしたことはない.
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