中口絵
文学の中の風景
大竹 新助
pp.77-80
発行日 1958年5月10日
Published Date 1958/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662201647
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「田宮虎彦で有名になつた足摺岬」
この辺一帯は,国立公園で巡礼の地としても知られている.四国八十八カ所の礼所の一つ金剛福寺がある.颱風の名所でもあり,難破船の多い海でもある,「足摺岬」の生人公はここに死に場所を求めてゆくのであつたが,土佐清水の宿屋の娘を知つてから生きる力を得たのであつた.
ここに身を投げたら,もう死体も揚がらないことだろう.それほど荒い海なのだが,南国だけに明るく,その明るさが,恐ろしさを救つている.暗いこの小説に一脈の光をさしいれているのもこの風景である.
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