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ハイライト
O
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P
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T
pp.40
発行日 1958年2月10日
Published Date 1958/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662201577
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フグの効用
寒い冬の晩にフグ料理で一ぱいやるのは乙なものである.食通には,その味は魚の中の王様とされているが,中毒するのが恐ろしくて手を出さないシロウトも大分いる.たしかに,1年間に200人前後の人がフグを食つて死んでいるが,自動車にはね飛ばされて死ぬ人にくらべれば物の数ではない.
一口にフグと言つても,十何種類とあるが,我々の食卓にのぼるものはトラフグ,マフグ,等である.フグ毒をテトロド・トキシンというが,この毒は一般に言われる様に肝臓と卵巣の中に最も多く,皮にも肉にも微量にふくまれている.そして,毒の量は季節的に変動があり,フグの個体差も大きいのだそうである.卵巣に多いのに,精子を作る睾丸(シラコ)には毒がない.フグ毒は,クラレの様な横紋筋の弛緩作用の他に,知覚麻痺と中枢麻痺が起り,血圧が下降し呼吸が止る.中毒のとき最初にあらわれるのは,悪心,嘔吐,運動失調などで食後3時間位にはじまる.胃液を吸引,人工呼吸等をしなければならない.面白い事にフグ毒の少量は性的な不感症の治療に使われることがある.食通は,この事実を知らないでフグを賞味している.
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