連載 ニュースウォーク・30
「時代」背負う高齢者—厚生白書を読んで
臼井 正夫
1
1元朝日新聞編集
pp.796-797
発行日 2000年9月10日
Published Date 2000/9/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662902266
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万葉歌人,山上憶良が没したのは天平5年(733年)と伝わっている。74歳だった。朝廷に仕えた学識の人で,遣唐使の一員として唐に渡り,帰国して晩年に筑前守になるが,万葉歌人では珍しく人生の喜び悲しみを詠んだ個性的な歌人として知られている。「瓜食めば子ども思ほゆ栗食めばまして偲はゆ……」など子への慈しみを歌った歌が万葉集に収められ,私たちにもなじみの歌が現代に生き続けている。
74歳というと,奈良時代の人としては随分長生きしたとみられる。それだけ加齢とともに進む肉体の衰えに長年苦しんだ。万葉集にも「沈痾自哀文」「老身に病を重ね,年を経て辛苦して児等を思う歌」(いずれも巻五)など,老いを嘆き,病を悲しむ漢詩文や和歌を残している。
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